漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「凪(なぎ)のお暇(いとま)」(TBS系 金曜22:00~)をウォッチした。
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この夏は古びたアパートに住んで、風に吹かれながらイケメンに「もっと力を抜いて生きていいんだよ」とギュッとされたい。そんなドラマがトレンド?
「セミオトコ」(テレビ朝日系)と、この「凪のお暇」。どちらもノスタルジーあふれる黄色みがかった映像だ。
空気を読みすぎて、生きることに疲れたヒロイン・凪(黒木華)。まっさらになろうと決心し、会社もやめて荷物も捨て、家賃3万円のアパートに引っ越す。
拾った扇風機。隣のベランダになるゴーヤ。青空の下で食べる「ツナ缶のっけトースト」など、財布にやさしいレシピもいっぱい。
もうね、時代が強火じゃないんだよ。無理して頑張るよりも、いい湯加減で穏やかに暮らしたい。そんな今の空気をしみじみ感じる。
お暇ヒロインをめぐる二人の男は、エリートだけどモラハラクソ男な元カレ・慎二(高橋一生)と、隣室に住むミステリアスなタトゥー男・ゴン(中村倫也)。「ありのまま気取りのアホ女! お前がいい人ってのは、どうでもいい人ってことな」などと凪を罵倒する慎二だが、実は未練タラタラで毎度彼女を想って号泣する。
この高橋のクソっぷりと無様な号泣具合が抜群で、これほど「不憫」が似合う俳優もいないやって思う。
かたや、癒やされたい女子をすかさずハグしてくれるゴン。最高のセックスをするけれど、事後ソク携帯でゲームを始めちゃう男。
彼は周囲の女たちから、つき合ったことを「思い出したくもないドブ歴史」と言い放たれる「メンヘラ製造機」だ。ゴンと慎二、全部違って、全部やばい。
でもね、一見二人の男に振り回されているような凪だけど、実は一番地に足がついている。
空気は読むものじゃない。「空気は吸って吐くものです」という境地に達する凪。なんというか究極の、右から左へ受け流す感。
彼女の空気に触れると、慎二は号泣し、ゴンは胸が痛くなり、男たちのメンタルは揺れ動く。実は、凪こそが「メンヘラ製造機」なんじゃないか? 魔性の「お暇女子」恐るべしなのだ。
ところでこの夏、家のエアコンがぶっ壊れた私から一言凪に言わせて頂ければ、扇風機ひとつの部屋で揚げ物するのは絶対無理! 閉め切った部屋に帰って来て、扇風機かけずに恋に思い悩むのも無理! まじ人生からお暇しちゃうから。
※週刊朝日 2019年9月13日号