知ってはどうか、と僕は思う。自分はすでに知っている、と思っている人はいないだろう。知らないけれど、とまでは言うことが出来ても、そのあとが続かない。

 自分が知らないことを知るための、もっとも簡単に出来てしかもかなり頼りになる方法は、書店へいって本を買い、それを読むことだ。本はたくさんある。知らなくてはいけないことについて書いた本が、たくさんある。

 いまの日本について、どの領域をどれだけ、自分は知っているのか。心もとないかぎりの人は、多いはずだ。僕もそのひとりだ。僕は知らなくてはいけない、と僕は真剣に思う。

『日米地位協定』『決定版消費税のカラクリ』『日本が外資に喰われる』の3冊を選んでみた。選ぶにあたって、特別な知識は必要としない。このことについて自分は知らないな、と思ったなら、その本を買って読めばいい。新書2冊に文庫が1冊。簡単に目につく、そしてじつにたやすく買うことが出来る。

『消費税のカラクリ』では、その帯に、「大増税はやってくる! 消費税とは弱者のわずかな富をまとめて強者に移転する税制である」と読める。『日米地位協定』の帯には、“過剰な優遇”の根源、とある。『日本が外資に喰われる』の帯には、「失われた30年」の謎を読みとく!とある。読みたいではないか、知りたいではないか。

 いまの日本がどのような状態にあるのか、この3冊を読むだけでも、よくわかる。行動を起こすための絶好の好機になにもしなかったゆえに、好機を失い続けた結果が、いまの日本だとわかったなら、読んだ人はいったいどのようなことになるのか。

 ここまでになってしまった日本を、どうすればいいのですか、と問うことは可能だろう。なにもしなかったから、いまこうなっている。なにもしないでいることがやがてもたらす結果は、途方もなく大きい。そのことを知るだけでも、この3冊には価値がある。

かたおか・よしお=1939年生まれ。著書に『窓の外を見てください』『あとがき』『珈琲が呼ぶ』『豆大福と珈琲』『万年筆インク紙』『歌謡曲が聴こえる』『言葉を生きる』など。

週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号

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