すなわち、土地神話が崩壊して、現金神話に代わり、この30年間国民の富は全く増えなかった。「失われた30年」であったといえる数字です。
もう一度、「最近の路線価が上昇している」ことの意味を考えてみましょう。私たちは長らく土地を値上がりしないデフレの象徴のように見てきました。しかしもし底打ちしたとすると、われわれは何を考えるべきでしょうか。「さあもう一度土地に投資をしよう!」と言うつもりは全くありません。それより、4割に近づいた「現金・預金」にリスクはないのかを考えるべきです。
現金・預金の元本は減りませんが、インフレになれば、お金の価値は低下します。資産を現金・預金だけで持っていることは、その意味でリスクを抱えていることです。政府がデフレからの脱却を標榜してもなかなか進まなかったのですが、じりじりと路線価が上がり始めるとインフレが近づいているようにも思えます。改めて資産構成を見直す時期に来ているのではないでしょうか。
※週刊朝日 2019年8月2日号