ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ブスな怒り」を取り上げる。
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日本が誇るオナニストでもいらっしゃる作家の岩井志麻子先生。なんでも関西のテレビで、日本と韓国の外交軋轢について「(韓国は)手首切るブスみたいなもんだと考えておけば、(韓国や韓国人の気質は)だいたい片付く」と発言をされ物議を醸しているそうで。要は韓国を、放っておかれると騒ぎを起こして気を引こうとする『かまってちゃん』に例えたら、彼女特有のウィットとエスプリが利きまくったというわけです。
志麻子さんの独特な節回しを知っている人ならば、別にこれが悪意や敵意剥き出しで発せられたものではないのはすぐに分かるでしょう。別に政治家先生の暴言・失言じゃあるまいし、ましてやこれを「ヘイトだ!」と目くじら立ててしまうのは、さすがにどうかと。ヘイトとは、もっとあからさまに相手を傷つける目的で悪口雑言(あっこうぞうげん)を浴びせること。もちろん傷つく・傷つかないは人によって様々ですが、それでも尚、ある程度の『腐(くさ)し』や『貶(けな)し』は必要です。でないと、いつか世の中全体が体温調節できなくなって、正義と配慮の自家中毒を起こしてしまいますよ。
ちなみに今回の志麻子発言。ブスに例えられた韓国はもとより、「ブスに対して失礼だ!」「ブスに謝れ!」なんて批判もあるようで、いよいよもって誰が誰を慮って何に怒っているのかすら分からなくなってきました。そもそも『ブス』という人種はどこにいるのか。ブスは、たとえ他人に「ブス」と言われようと、自分で自分のことをブスだと認識していようと、そこには何の根拠も裏付けもないわけで、その理論でいくとこの世にブスは存在しないことになります。仮に「手首切るブスみたいなもんだ―」の『ブス』の部分が、『オカマ』や『デブ』だった場合は、「オカマに対して失礼だ!」や「デブに謝れ!」は成立しますが、人や物事を『ブス』に例えても、理屈的にそれで傷つく『当事者』はいないのです。同様に『バカ』や『クズ』もそのレッテル(自薦・他薦問わず)を貼られない限り、当事者はいません。