『シンドラーズのリスト』や『イングリッシュ・ペイシェント』で、イギリスを代表する俳優となったレイフ・ファインズ。監督デビューを果たした話題の作品が『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』(公開中)だ。レイフが映画に対する熱い思いを語った。
――2019年に伝説のダンサー、ヌレエフの物語を映画にすることの重要性とは何でしょうか?
「人間として、自分を発見することへのあくなき探求、尽きない要望というのなかな、そんなテーマに惹かれたんだよ。人生と言うのは、自分とは何者かを求める旅だと思うから。本当の自分と向き合う旅。自分を発見すると言うは、とても難しい。多くの場合、我々は、自分と言う人間の一面を演じてみたりもする。ヌレエフはアーチストとして、自分自身に一切、妥協を許さなかった。自分に対し一切センサーシップなしだった。そこにとてつもなく興味をひかれた。そのためには、狂信的とも言えるような勇気が必要で、他人の気持ちが介入する場もない。そんな姿勢を貫きつつ、アーチストとしてどう生き延び成長するか、それは難題だ。ルドルフは自分の芸術性に対して。若い時に可能性を拒否された経験があったからこそ、目的に向かって獰猛に向かっていく姿勢を身に着けたのではないかと思う。非常に感動的な物語であると思う」
――時代的にも冷戦時代で、政治的な要因が彼の人生を左右したという点でも興味深いテーマですね。
「スポーツ選手やポップ・スターの生きざまが、多くの人のインスピレーションになったりする。自分の夢を追求するためには、ルールをどこまでまげていいのか考えさせられる。それはグループ内に置ける、個人の態度について疑問を投げかけることにもなる。彼はソ連と言う社会に育った。集団のエソスこそが絶対の社会だった。それら様々な疑問を投げかけるのがこの映画なんだよ」
――バレエにはご興味があったのですか?詳しいですか?
「この映画を作りたいと思ったのは、バレエに特に興味があったわけではなく、ヌレエフと言う人物に興味が湧いたからだ。ただ映画を作った事で、バレエに興味が沸き好きになったね。最初はちょっと不安だった。あまりバレエについて知らないのにバレエを撮影しなければならなかったから。それで専門家や振付師などに、助けをこいバレエが理解できるようになったと思う。バレエにある規律が好きだ。身体を非常に具体的な角度にもっていく作業である。また何かを表現できているときだけが美しい。技術だけでは感動は誘えない。バレエが具体的に何かを表現しようとする点に、非常に興味をそそられるんだ」