企業の「迷走」をよそに、大人世代向けビジネスの成功事例はどんどん積み上がっている。

 旅行業界は30代向けにPRしているが、もちろん例外はある。

 JR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」。「特定の世代を狙ったものではない」(広報)とするが、13年秋の開業以来、乗客の平均年齢は61歳で50代以上が約73%を占める。

 事前の電話での打ち合わせは食事のアレルギーに始まり、旅の途中で聴きたい思い出の音楽や同行者へのサプライズの「演出」など詳細を極める。出発前にはウェルカムセレモニーがあり、車内ではおしゃれを楽しむドレスコードも……。まさに「ワクワク感」の塊だ。利用者の満足度が高いことは、「リピートして乗車される方も少なくない。5年経っても、なお毎回抽選が続いている」(広報)ことからもわかる。

 旅行業界では、この分野の老舗といえる「クラブツーリズム」。1980年代から年配層を対象に、趣味をキーワードにした「テーマ旅行」を展開して好評だ。

 17回に分けて周辺を1周する「富士山すそ野ぐるり一周ウォーク」、街道を進む「東海道五十三次を歩く」など名企画が目白押し。トヨタ自動車の工場見学をセットにしたツアーの成功で始まった、「大人の社会科見学」も有名だ。

「代官山 蔦屋書店」のところでも触れたが、大人世代は趣味を深める傾向がある。

「趣味の多様さ、深さに対応するため、たくさんのツアーをご用意しています。『多品種』がウチのテーマ旅行の特徴です」(クラブツーリズム広報)

 ここまでは自らが進んで動く消費者が相手だが、「動かない層」の集客に成功した企業もある。50代以上の女性を中心に30分でできる健康体操教室を開いているフィットネスチェーン「カーブス」だ。

 アメリカ発で05年から日本でも展開し始め、現在は1900店舗を誇る。「買い物ついでに気軽にでき、筋力運動を中心に続ければ効果が出る」が基本コンセプト。対象にするのは「運動が苦手、でも健康のために何かをしたい」と思っている女性たちだ。戦略企画部の安川竜太郎マネジャーが言う。

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