低層の建物が並ぶ、ゆったりとした配置。中央棟の2階にはアルコールも飲めるカフェがあり、洗練されている。特筆すべきは、そんなおしゃれな空間に引き寄せられて、50~60代だけでなく、すべての世代がやってくることだろう。
「11年暮れにオープンすると、若い人たちがブログなどで『すごい所ができた』『こんなの見たことない』などと書き込んでくれて、アッという間に今のような来客ぶりになりました。今は人数で一番多いのは40代のお客さまです」(土門店長)
大人世代向けの素敵な店にすれば、下の世代も憧れてやってくるのだ。これこそ大人世代からのトレンド発信。これからはこうした現象が相次ぐ可能性がある。
世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは、企業側に大きな誤解があると言う。
「企業マンと接していると、彼らは大人世代が増えても従来型のおじいさん、おばあさんが増えるだけと思っているように感じます。企業幹部の男性が『大人女子』として想定するのは『ふだん着』の自分の奥さん。『奥さんが友達と出かける時にどれほどおしゃれするか見てください』と言っても、聞く耳持たずです。奥さんの家の中の姿だけを基準に、『大人女子はいつも同じ服を着る』『お金も使わない』となってしまいます」
あるメーカーの女性社員が、大人女子の世代の意識を探ろうと、詳しいリサーチプロジェクトを立ち上げ、牛窪さんの会社に調査を依頼したことがあった。
「その女性社員は『大人女子がカッコいいクルマを選ぶ時代が来る』と思っていて、かなりお金もかけたプロジェクトだったのですが、結局、1年で中断になりました。幹部社員の『女性はクルマにこだわりがない』という一言で、終わったそうです」
企業側の人員構成も影響している。大企業の実務の中核を担うのは30~40代の中堅。彼らに大人世代のことを考えろと言っても実感がわかない。
「この面からも大人世代は放置されることになります。せっかく大人世代向けビジネスで成功の芽が出ているのに、担当者が代わると30~40代向けに方針を変えて、つぶしてしまうのをよく見ます」(マーケティング関係者)