ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。フェイスブックが厳しい批判にさらされている現状を解説する。
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フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは3月30日、各国政府や規制当局に対し、インターネット上のルールの確立に向けて「より積極的な役割を果たす」よう求めた。これまで政府からの介入に抵抗してきたフェイスブックが方針を転換し、規制を容認する姿勢を明確にしたことになる。
ザッカーバーグ氏は、米ワシントン・ポスト紙に寄稿しこう訴えた。
「規制を更新していくことで、インターネット最大の長所である個人の表現の自由や、企業家が新しいことを始める自由を維持しつつ、広範囲に及ぶ危害から社会を守ることができる」
そして次の4分野で「政府主導」の規制が必要だとしている。
(1)人を傷つける有害な投稿(2)公正な選挙(3)プライバシー(4)サービスをまたいで個人データを移管できるデータ・ポータビリティー。
これらはフェイスブックが世界中から強い批判を浴び、対策が求められている分野だ。それぞれ、次の問題に対応している。
(1)ヘイトスピーチや暴力の扇動、テロリストのプロパガンダ、デマ・フェイクニュースの蔓延(まんえん)(2)外国からの選挙干渉や情報工作、選挙広告の不透明性(3)ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルを始めとする個人データの不正収集や不正利用(4)米テクノロジー大手による個人データの独占や囲い込み。
中でも頭を悩ませてきたのが、(1)の「人を傷つける有害な投稿」への対策だ。先日のニュージーランドの銃乱射事件でも、犯人がフェイスブックを通じて事件の模様を生中継し、世界各国で同社の責任を問う声が高まっている。
フェイスブックはこれまで、フェイクニュースやヘイトスピーチなどへの対策を進めてきた。しかし、同社は常に、自らは「裁定者」ではなく、何を禁止すべきかという判断は外部に委ねるという姿勢を取り続けてきた。