●ジャズの“すべて”に関する究極の証言集
ジャズ・ミュージシャンは、揺るぎない持論と、並外れたユーモア感覚をもちあわせている。本書は、時には面白く、時には不埒な彼らの啓発的な名言を集めた、貴重な証言集である。
ここでは、ジャズの巨匠や馴染み深いサイドメンが、女性、人種、ミュージック・ビジネス、インプロヴィゼーション、あるいは「ジャズとは何か?」「ジャズの未来とは?」といった永遠の命題を含む、さまざまなテーマについて主張し、語り明かしている。
たとえば、ジェリー・ロール・モートンのヴォードビリアンらしい品性、ルイ・アームストロングのほのぼのとしたユーモア、デューク・エリントンの洞察力、マイルス・デイヴィスの辛らつな見解といったように、それぞれのキャラクターが楽しめる語録でもある。
彼らジャズ・ミュージシャンが語っているテーマは多岐にわたるが、カウント・ベイシーが語るアート・テイタム、そのテイタムが語るバド・パウエルなど、楽しい仕掛けや演出も盛り沢山。またルイ・アームストロング《ウエスト・エンド・ブルース》、ベニー・グッドマン《ドント・ビー・ザット・ウェイ》、レスター・ヤング《レスター・リープス・イン》、チャーリー・パーカー《オーニソロジー》、セロニアス・モンク《ミステリオーソ》、マイルス・デイヴィス《マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン》といったように、有名ミュージシャンとその代表的なレパートリーにまつわる証言をまとめたコーナーなどもある。
●ジャズ・ミュージシャンは語る
「結局のところ、ジャズは音楽だ。演奏するべきものであり、知的に論じるべき対象ではない」
ジェリー・マリガン
「いやはや、ジャズと恋愛ほど論理的な根拠に基づいて説明しづらいものもない」
メル・トーメ
「ジャズには“それ”が不可欠だぜ。“それ”は生まれつきのもんだ。金を払っても手には入らない。買えるもんなら、誰だって次のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルで手に入れるだろうよ」
マイルス・デイヴィス
「私は成功したいと思ったことはない。アメリカで誰にも邪魔されずに唯一なりうる者、つまり失敗者になりたいんだ」
サン・ラ
「俺のやることは何だってミンガスなんだ、わかったか?」
チャールス・ミンガス
「練り歯磨きにはいろんな成分が入っているんだよ。だが、誰もどんな成分なのか調べようとはしない。もしかすると、とんでもない成分が入っているかもしれないのに、誰も気にしないで、それを使っている。それなんだよ」
オーネット・コールマン
「私の場合、脳みそが我慢できないことは、口に指令を出して一切しゃべらないようにしている」
ルイ・アームストロング
「ジャズがどこへ向うのかはまったくわからない。たぶん、ろくでもない方向に向うんだろう。だいたい何であれ、意図的に方向付けるなんて芸当は誰にもできないものだ。それは偶然の産物にすぎない」
セロニアス・モンク