──若い光一さんが、年上のスタッフに指示する大変さもあったのでは?
当時、25歳でしたからね。そんな若造の意見をしっかり受け止めてくださっていたと思うと、本当に素晴らしいスタッフに恵まれています。ただ、そのときは自分も必死だったので、「いや、そうじゃない、違うんだよ」となり、波風が立ったこともありました。わかってもらえなくて、「もういいや、自分で考えるから」となったり。
でもそれをやめて、人に任せることができるようになってから、いろいろ変わりましたね。任されたほうには責任感が生まれて、「『SHOCK』をよくするためにはどうしたらよいのか」と、自発的に考えてくださるようになった。「光一が言うなら、やってみよう」と思ってくださる。これはものすごく大きなことです。「あー、もう自分がやる!」と言っていたら、いつまでたっても信頼関係なんて築けなかったと思います。「SHOCK」を長くやるなかで得た一番大きなものは、これだと思うんですよね。
──「人に任せる」大変さと大切さは、多くの仕事に通じると思います。
仕事によってもさまざまだと思いますが、舞台の場合、実際に舞台上で試してみないとわからないことも多いんです。たとえば映像を使った演出の場合、映像スタッフがいくつかパターンを用意してくださるんですが、試してみると違ったりする。そのときは、「これができるなら、もっとこんなこともできない?」というお願いの仕方をしてみたり。そこからはディスカッションですよね。これも、お互いを信頼しているから、できることだと思うんです。
──「SHOCK」を見ると、妥協をしない、プロ意識の高さが伝わってきます。
でも、昔に比べると妥協するようになりましたよ。“妥協”というとマイナスに聞こえますが、“その場における最善”を考えるようになったといいますか。舞台では、「ここを改善すると、こっちに弊害が出る」ということが、山のようにあるんです。だから「絶対にこうしないとイヤだ」という頭の固さは、あまりよいことではないと思うんです。