──今年の「SHOCK」では、オーケストラを増やすためにさまざまな工夫がなされたと聞きました。
オケを増やしたいという話は数年前からしていたんです。ただ、増やすには今までステージとして使ってきたオーケストラピットを使わないと入らない。そうすると演者のパフォーマンススペースが少なくなるし、フライングのスタートや着地の位置も変えなくてはならない。「今までのほうが見せ方としてはいいよね」という意見も、当然あると思うんです。でもそこは、一つのショーとしてよりよくなるほうを選択したいと思いました。
──1月1日に、40歳を迎えられました。主人公のコウイチは若い青年ですが、役に対する思いに変化はありますか?
だんだん役中の人物との年齢が離れてきましたからね。05年の頃は、「コウイチという役こそが正義」という作り方をしていましたが、そうじゃない部分も見えてきました。舞台で起きる悲劇的な事故も、決してライバル役であるウチ(内博貴さん)のせいだけではない。コウイチ自身の弱さや未熟さを表現することで、ストーリーも立体的になってきたと思います。
よく、「コウイチは心の中が見えづらい」と言われますが、それで正解だと思うんです。一番上に立てる人というのは、ほんの一握りですし。「俺は周りにどう思われてもかまわない。あいつらがもっと上を目指そうっていう気持ちになってくれるなら」というコウイチのセリフがあるのですが、彼はカンパニーが挫折しないように仲間を引っ張ろうとする一方で、一人で抱え込みすぎて周りが見えなくなっている。
ただ、コウイチは意外と、男性の共感を得ることがあるんです。とくに年齢を重ねた方の。一方でウチは感情的な役ですし、一般のお客さんが共感できる。そうしたさまざまな反応をいただくのは、うれしいですね。
(取材・構成/本誌・野村美絵)
※週刊朝日 2019年4月12日号