身近な人の死は突然訪れる。悲しみにくれるなかで、短期間のうちに葬儀やお墓の準備をしなければならない。地域や宗派の慣習に左右される面も大きい。どうすればよいか戸惑ってしまうのは当然だ。
まずは家族とよく相談する。夫婦だけで決めて、子どもらと話し合わないと、後からもめることになる。
例えばこんなケースだ。茨城県の70代の男性は、自分が入ることを前提に、大きな墓石を200万円かけて新調した。東京などで暮らす子どもや孫が、将来墓参りしてくれることを願ってのことだった。ところが40代の長男は、費用を含め何も聞かされていなかった。
「昨年実家に戻ったときに初めて聞かされました。お墓にそんなにお金をかける必要があるのかと、困惑しました。親が亡くなった後に誰が管理するのかも決まっていません。いまさら解約もできないので、これから時間をかけて話し合っていきます」
「遺族に迷惑をかけたくない」と思って、遺骨を海や山にまく「散骨」を希望する人もいる。
都内の50代女性は、数年前に亡くなった母親から、闘病中に「死んだら海に散骨してほしい」と言われていた。母は熊本県出身で、両親やきょうだいもすでにいない。実家のお墓に入るには遠いし、新しくつくって子どもに管理してもらうのは気がひけると感じていたようだ。
しかし、女性は結局、自分がお参りしやすい都内の納骨堂に入れることにした。
「母に思いを寄せたいときにお墓も遺骨もないのでは、やはりしのびないと思いました」
本人の希望は尊重されるべきだが、残された遺族にも思いはある。一人の考え方だけで決めてしまえるものでもないのだ。
お墓のことは縁起でもないので話しにくいというみなさん。元気なうちに相談しないと、いつまでたっても先送りになる。お彼岸のこの時期は、将来を考えるいい機会だ。(本誌・死後の手続き取材班)
※週刊朝日 2019年3月22日号より抜粋