鶴岡:そうですね。最初は、原作どおりみたいな脚本を書いて、そこからちょっとずつ脚色していった感じですね。
草なぎ:作品の核になるところをちゃんと映画にも残していたんですね。魂というか、気持ちがこもっている映画になってるよね。
鶴岡:ありがとうございます。
──サトシと光一がズボンとパンツを下ろし、初めてお互いに向き合うシーンがあります。あの場面は実際にされたんですか。
草なぎ:もちろん。最初は前貼りをつけていたんですけど、どうしても後ろが見えちゃうと。
鶴岡:前貼りのテープがちょっと見えちゃう。
草なぎ:だから思い切って外して。でも、サトシと僕しか見えていません。
鶴岡:そう。お二人しか見えていませんから。
草なぎ:サトシは見ていいんですよ。そういう役だし。僕もちょっと恥ずかしかったけど、そこはもう役者同士の戦いですから。
──本当の親子と思って演じたんですね。
草なぎ:それはそうです。台本を読んだとき、このシーンは僕が出演している部分で一番大事だなと思ってたんです。ここからちょっとサトシが変わっていくっていうか。
──それほど大切なシーン。
草なぎ:そう。恥ずかしいと思っていたら、ばちが当たるっていうか。サトシは撮影中、温泉街にずっと泊まり込みで、すごい度胸がついていたんですよ。監督のサトシへの指導がすごいから。リハーサルから「サトシ、そうじゃないよ」って。
鶴岡:「思い切りいけよ」みたいな感じで、厳しく指示しましたから(笑)。
草なぎ:すべてのシーンで監督は妥協していなかった。やさしい顔して「もう一回、いってみよう」って。彼は鍛えられていました。あそこのシーンでも、僕は「ここをちゃんとやればどうにかなる」みたいな、ちょっと軽い気持ちで入ったんですけど、サトシはすげえオーラをまとってて。その温泉街に暮らしている小学生になりきってた。僕も「ちゃんとやんなきゃな」って気合が入りました。あのシーン、サトシも僕もすごく緊張しました。