草なぎ剛さんは、業界で“最も役になりきる”と評される演技派。心機一転して挑んだ役柄は「女遊びの絶えないダメおやじ」役だった。15日に公開される出演映画「まく子」をめぐり、鶴岡慧子監督と語り合った。
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──「まく子」では、草なぎさんが今までのイメージとかなり違う役柄だったので驚きました。小学5年の主人公、サトシの父親・光一の役。昭和だったら火野正平さんが演じそうな、女ったらしでだらしない男です。監督は、なぜ草なぎさんを起用したのですか。
鶴岡慧子(以下、鶴岡):子どもが主役ですが、周囲にバシッと柱になるような大人が必要だと思ったんです。主役の父である光一がそれだろう、と。無類の女好きではありますが、すごくチャーミングな人。
──愛人をつくっても憎めない人ですよね。
鶴岡:みんなに愛される“人たらし”というか、奥さんがいても他の女の人にコロコロといってしまう。不器用なところも、ちょっとかわいく見えるような人。私自身が光一というキャラクターが好きだったので、「当たって砕けろ」みたいな気持ちで草なぎさんにお願いしました。
──草なぎさんは、ダメおやじの役をすんなり受け入れられたのですか。
草なぎ剛(以下、草なぎ):嫌も何もないですよ。仕事があるのかどうか、けっこう真剣に考えていたころにいただいたお話だったんです。
──そんなことはないでしょう。
草なぎ:いや、本当にそうなんです。本当にいいタイミングだったんですよ。新しい道をちょっと歩き始めて、「新しい地図」を広げたばかりだったので。ゼロからのスタートで不安もあり、「どんな役でもいい、仕事をしなければいけない」と強く決めていたころに最初に声をかけていただいて。鶴岡監督がすごく面白い方だとうかがってもいたので、これはもう、すぐやります、と。
──一歩間違えたら、女性に嫌われる役。そういう不安はなかったですか。
草なぎ:いや、全然。でも、そういう役のほうがやりがいがあるっていうか、やったことのない役でよかったです。「まく子」は少年と少女の甘ずっぱさを感じる作品です。僕も昔、「大人になりたくない」みたいなことをちょっと思っていたんですよ。自分の役も楽しそうだし、作品自体も「何だこれ。不思議な感じ」と思って。監督、これ、本をそのまま映画にしたんですか?