高校2年生のときに、人生を変えてくれる映画と出会った。地方都市に住む男女の幼なじみが、恋人の暴力に苦しむ親友を救うべく奮闘する青春映画「ぼんとリンちゃん」で、高杉真宙さんはヨコハマ映画祭の最優秀新人賞を受賞した。ゲームやアニメを愛するオタクの役で、脚本を読んだとき、「これは僕自身だ」と思ったという。
「正直、この役と出会う前の僕は、俳優という仕事に対する執着も憧れも、何一つなかったんです。ただ、出会う人たちが刺激的で、また面白い大人たちに会いたくて現場に行っていただけ(笑)。だからと言って、適当に演じていたわけではないけれど、芝居を極めようとか、そういうちゃんとした志のようなものは持っていなかったと思います。それが、リンという役に出会ったことで、俳優が、見る人に影響を与えることができる仕事だとわかったんです」
ずっと、俳優として生きていきたい。そんな目標を持つようになって、一つの役に出会うたびに、たくさん悩むし、たくさんのことを想像する。
「たった数秒のシーンのために、何十時間もかけて準備をすることも少なくないですが、好きなことに携われているから、全く苦ではないです」
若き歯科技工士を演じた映画「笑顔の向こうに」が、第16回モナコ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞し、受賞報告会見では、「海外に進出したいですか?」などと質問もされた。
「俳優として、いろんなことに挑戦していきたいとは思っていますが、この間、関西弁の役を演じたときに、関西弁のセリフにうまく感情を乗せられない自分がいて、すごく戸惑ったんです(苦笑)。言葉を自然にしゃべることに気をとられると、感情表現が不自由になる。関西弁でさえ、感情を乗せるのに四苦八苦しているのに、例えばこれから英語を学んだとして、そこから感情を込めて英語のセリフをしゃべれる自分が、まだ想像できません(笑)。俳優として成長するためにも、今は目の前にある課題を、一つひとつクリアしていく段階なのかなと思います」