都内のC子さん(46)も、B子さんと同様、子供に手がかからなくなってからタカラヅカファンになった。ただしC子さんは「新規」だ。
「中3の長男が部活の野球部を引退するとき、同じ野球部のママ友たちと同じ趣味を持とうとなり、ミュージカル好きの人がタカラヅカを提案しました」
たまたま最初に見たのが当時月組の男役トップだった龍真咲の公演で、あまりの素敵さにすぐはまってしまった。
「そのあと宙組男役トップの朝夏まなとさんの『エリザベート』を見て、沼に落ちてしまったんです。朝夏さんのファンクラブにも入ったのですが、17年秋の退団が決まり、結局、その年は、朝夏さんを見るために全部で50回ぐらい観劇しました」
B子さん・C子さんともに、はまったのはここ数年のことだ。実は冒頭のA子さんもゆるいタカラヅカファンだったのが、頻繁に行くようになったのは今のご贔屓のファンクラブに入ってからだ。
いったい、タカラヅカの何がイマドキの大人女子をひきつけているのか。
元阪急社員で『元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略』の著書もある阪南大学の森下信雄専任講師は、そもそもタカラヅカファンの世界は女性コミュニティーに向いている側面があるという。
「ふだんは積極的に宣伝もしないタカラヅカがなぜ満員を続けられるのか。それは、言葉は適切かどうかわかりませんが、『お客さんがお客さんを連れてくる』という、いわば『ねずみ講』のようなシステムがあるからなんです」
こういうことだ。ファンクラブの存在などタカラヅカには長年にわたって築かれた独特の「流儀」があり、タカラヅカファンたちは何も知らないずぶの素人が入り込んでくるのを、あまり好まない。その代わりに自分の世界観を共有してくれそうな知り合いを誘い、見る前にその流儀を徹底的にレクチャーするのだ。
「教えてあげること自体が楽しみに加わります。観劇プラスアルファの世界です」
いかにも大人女子が好きそうな世界だ。そして、連れてきた知り合いがはまれば、その人がまた別の知り合いを連れてくる。客が客を呼ぶ構図である。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2019年2月22日号より抜粋