手痛いしっぺ返しを食らったのか――。勾留が続く日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の母国フランスの検察当局が、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を汚職に関わった疑いがあるとして訴追するという。2020年東京五輪招致をめぐって、180万ユーロ(約2億3000万円)の贈賄に関わったとされる。
【写真】汚職に関わった疑いで仏メディアに報道された竹田恒和会長
国家間のこうした意趣返しとも取れる行為は、最近もあったばかり。昨年12月、中国の通信機器大手ファーウェイのCFO(最高財務責任者)が米国の要請でカナダ当局が逮捕すると、中国が大激怒。国内13人のカナダ人を拘束した。再報復として米国は政府機関に対しファーウェイ製品の使用を禁止。日本など同盟国にも呼び掛けた。すると今度は、中国で米アップル社の「iPhone」不買運動が沸騰し、泥沼化している……。
東京地検特捜部は1月11日、ゴーン前会長を会社法違反(特別背任)の罪で追起訴した。私的取引の損失を日産に付け替えたなどというもの。勾留の長期化を予測する報道もある一方、ゴーン氏は国際世論の喚起に成功したとの見方も広がっている。
「私は無実だ。根拠もなく容疑をかけられ、不当に勾留されている」
8日、東京地裁で勾留理由を開示する手続きが行われ、ゴーン氏は特別背任事件で身の潔白を訴えた。
勾留理由開示は、裁判所に対して被疑者・被告人が自らの勾留を認めた理由を説明するよう求めることができる手続きだ。だが、勾留が取り消されることはほとんどないから「やるだけ無駄」と思われているのだろう。
2017年の勾留状発布件数は10万4529件に上ったが、勾留理由開示が実施されたのはわずか583件だけ。約0・6%に過ぎない。だが、ゴーン氏はこの制度を活用することで大きなメリットを得たようだ。
元刑事裁判官の安原浩弁護士がこう語る。
「正当な理由もなしに、いつまでも勾留を続ける日本の司法制度はおかしいじゃないか、ということを世界が注視する中でアピールできたのではないかと思います。裁判官にとっても相当なプレッシャーになるはずです。勾留理由開示は本来、裁判官ができる限り具体的に理由を説明して、それに対する反論を被告人と弁護人にさせます。そのうえで勾留の必要性の有無を裁判官が考え直すというのが、制度の趣旨です」