Race Music/Black Cultures From Bebop To Hip-Hope By Guthrie P. Ramsey, Jr.
この記事の写真をすべて見る

●本書について

『レイス・ミュージック/ブラック・カルチャーズ・フロム・ビバップ・トゥ・ヒップホップ』は、文字通り、ビバップからヒップホップまで、多岐にわたるアフリカン・アメリカンの音楽を網羅している。

 著者ガスリー・P・ラムゼイ・ジュニアは、シカゴのサウス・サイドにおける、彼自身の家族や友人との興味深い音楽体験から語りはじめ、日曜日の朝の礼拝、食事やダンスを交えた家族の団欒、ナイトクラブでのジャム・セッション等をまざまざと再現する。

 ラムゼイは、どのように音楽の意義が公私両面の実生活で具現化され、どのようにアフリカン・アメリカンの音楽が黒人社会で形成され、その独自性が反映されてきたのか、その経緯に関して論証する。

 本書は、熟達したミュージシャンとして、また、文化的な知識のある理論家として、黒人社会という土壌から生まれた熱情家としての著者の体験を通して、アフリカン・アメリカンの音楽の全世界に及ぶ影響や人気、社会的な関連性、その解釈や批判にまつわる主な問題点を探る。

 また、ジャズ、リズム&ブルース、ゴスペルとともに始まる本書は、音楽のさまざまなジャンルが、あきらかに異なる因習、演奏スタイル、形式的な特性をそれぞれにもちながらも、同じようなテクニックとアフリカン・アメリカンの音楽的伝統に結びつく概念上の枠組みに基づいていることを実証する。

 ラムゼイは、1940年代の社会的な変化が、アフロ・モダニズムを引き出し、その後の多くの音楽と文化を触発した事実を示すべく、ダイナ・ワシントン、ルイ・ジョーダン、ディジー・ガレスピー、クーティ・ウイリアムズ、マヘリア・ジャクソン等の歩みをふり返る。

『レイス・ミュージック』は、黒人社会が、ジャンル間の境界を超越することによって、音楽の形態や表現形式に関する知識を、世代から世代へと伝えた実情をあきらかにし、さらには、ソウル・ミュージックのメッセージが、ブラック・パワー時代の刺激的な社会的気運に貢献した状況をも考察する。

 著者ラムゼイは、ヒップッホップの映画とコンテンポラリー・ゴスペルの様式的発展を論じつつ、、現代の社会的なエネルギーとアイデンティティーに関する問題が、20世紀の最後の10年における音楽的な実践の中で、広く行き渡った経緯についても表す。

 数々の要素が複雑に絡み合った本書は、アフリカン・アメリカンの音楽のさまざまな面とそこに吹きこまれた自民族中心主義のエネルギーを再考するためのダイナミックな構成となっている。

[AERA最新号はこちら]