ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。問題続きのフェイスブックに持ち上がった新たな疑惑について解説する。
【米議会の公聴会で証言するフェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)】
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2016年11月の米大統領選挙以降、ロシアによる選挙介入やヘイトスピーチ、情報流出などをめぐって大きな批判を浴び、窮地に立たされているフェイスブック。表向きは自らの非を認め再発防止を約束してきたが、その裏でひそかに問題の火消しを行っていたことがニューヨーク・タイムズ紙の調査報道で明らかになった。
同紙は11月14日、フェイスブックの幹部や従業員、政府職員やロビイストら50人以上の関係者に取材、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)とシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)が、水面下でどう対応してきたかを報じた。
記事は衝撃的な内容だった。フェイスブックは問題発覚以前からロシアの選挙介入を察知していたにもかかわらず、同社が介入を認めた17年9月まで隠蔽(いんぺい)を続けていた。15年には、大統領候補者であったトランプ氏がフェイスブックに投稿した差別的発言への対応について上層部で議論したものの、共和党からの批判や支持者の反発を恐れて黙認していた。いずれの判断もサンドバーグ氏が主導していたという。
さらに、フェイスブックが問題発覚以降、批判をかわすために水面下でさまざまな活動を行ってきたことも明らかになった。中でも、同社が契約していた共和党系のコンサルティング企業「ディファイナーズ・パブリック・アフェアーズ」の動きは驚きだった。抗議団体の信用失墜を狙って、「大物投資家のジョージ・ソロス氏が抗議団体に資金提供している」といった情報を記者に流していたのだ。フェイスブック批判の急先鋒(きゅうせんぽう)でユダヤ人のソロス氏は、極右勢力を始めとする反ユダヤ陰謀論者から攻撃を受けており、それを利用しようとしたとみられる。