松江市を本拠に20年活動を続けてきたシンガー・ソングライター浜田真理子が、“浜田真理子の昭和歌謡”とサブ・タイトルのついたカヴァー・アルバム『LOUNGE ROSES』でメジャー・デビューをはたした。
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1998年にインディーズから出したデビュー作『mariko』の最初のプレスは500枚。このうち300枚は友人らに手売りしたという。それが東京の音楽関係者の耳にとまって紹介され、残りは即座に売り切れて廃盤に。2年半後の再発とともにメガ・ショップでプッシュされ、カルト・ヒロインになった。
64年生まれ。OLをしていた浜田は、娘が高校を卒業した40代を過ぎたころから本格的に音楽活動に取り組んだ。映画の主題歌などを手がけ、アルバムを発表する一方で、2008年からは久世光彦のエッセイを題材にした音楽舞台で朗読の小泉今日子とも共演し、以来、各地で開催を続けてきた。
浜田の魅力はその“声”にある――。そう語るのは、彼女のアルバムの制作を手がけてきた久保田麻琴だ。
ピュアで無垢、飾り気のない真っ直ぐな彼女の歌声は耳を捉えて離さず、心を動かす。さりげない佇まいのピアノ演奏も魅力的だ。
英語での歌いぶりは清楚で可憐。ところが、日本語によるオリジナルでは、ゆったり穏やかに、とつとつと歌う彼女の歌声からは、心に秘めたオンナの情念、執念、怨念がのぞいて見えて、グサリと胸をひと刺し。“怖い!”と思わず後ずさりしてしまうこともある。
本作『LOUNGE ROSES』は、カヴァー集だ。浜田はこれまでにもライヴでカヴァー曲を披露し、アルバムにも収録してきた。
昭和の歌謡曲に取り組むことになった理由の一つは、制作を手がけた久保田に“背中を押された”からだ。昭和の歌謡曲は、浜田の原点にあたるという事情もある。
本作の解説によれば、父親がスナックやクラブを経営していたことから、幼いころから昭和歌謡に親しんできた。店のジュークボックスに合わせ、客前で歌った。5歳のころからピアノをはじめ、小学校3年のときに父親からピアノのコードを教えられたのをきっかけに、ムード歌謡を歌い始めたという。