「この映画は究極的にはファシズムについての映画だ。ファシズムと言うとき、僕は20世紀のファシズム、第2次大戦の時代のドイツ、イタリア、日本にあったような権力を指しているわけではない。今あるのは21世紀のファシズムだ。20世紀のそれよりもずっとフレンドリーなバージョンで、多くの人を殺すことになるだろう。それは誰かを列車に乗せて強制収容所に連れていくようなファシズムではない。どういう形をとるかといえば、トランプのような人間が多くの人を自分の味方につけ、社会を率いるという形をとっている。それも人を強制するのではなく、“僕についてきてくれれば、僕は君たちのためにこんなことができる”という形なんだ。非常に危険なことが起こっているんだよ」

──どのような危険でしょうか?

「アメリカ以外の国でも同様なことが起こりつつある。民族主義者や右翼結社がヨーロッパやブラジルのようなところで勢力を伸ばしつつある。それは日本でも起こる可能性がある。過去にそういうことがあったから。そういう意味で、この映画は日本に向けてのメッセージが多くこめられた映画だと思う。アメリカで起こっているようなことが日本で起こらないための警告だよ。またこの映画を見た日本の観客が、安倍(晋三)首相に向けてトランプ大統領と距離を置いてほしいという懇願の手紙を出してくれればと思う。今のところ、安倍首相はトランプ大統領の親友の一人のように僕には見えるからね」

──35歳で故郷ミシガン州フリントの抱える自動車工場の閉鎖と失業についてのドキュメンタリーを作り、映像作家としてデビュー。あなたのトレードマークのアポなし突撃取材による痛快で衝撃的な映画を作ってきましたね。本作でもあなたは故郷フリントの水道汚染事件を取り上げています。自分に身近な問題を取り上げることがより大きな世界的課題に取り組むための第一歩だと信じていますか。

「確かに僕はアメリカ人に対して自己批判的だ。それは重要だと思うし、地球という星の抱える問題の解決策の第一歩であると思う。他人の間違いよりも自分の間違いを指摘することが大切だ。アメリカ人は他の国の問題に口を出す前に、自分の国の抱える問題にまず目を向けるべきであると思うね」

暮らしとモノ班 for promotion
「プラレール」はなぜ人気なの?鉄道好きな子どもの定番おもちゃの魅力
次のページ