──またこの映画は女性や若い世代に注目し、観客に希望を与えるシーンもありますね。

「大学生や教員組合、そこからの立候補者などがトランプ打破の可能性を提供してくれるのではと感じている。今、起こりつつある革命を率いるのは女性であり若者であるという点は明らかだ。彼らこそが、この問題の解決策かもしれない。特に黒人の女性には期待している。大統領にオプラ・ウィンフリーやミッシェル・オバマに立候補してもらいたいんだよ。強い黒人女性がこの国の政府を運営してくれたら、僕は文句を言わないよ。特にミッシェル・オバマは圧勝の可能性が高いと思う。多くの人から愛されているから」

──ソーシャルメディアが圧倒的な時代においてドキュメンタリー映画は以前よりも衝撃度が弱くなったと思いませんか? 見られる映像が氾濫しています。

「確かにそうだね。だからこそ逆に人は常に真実を求めていると思う。真実は様々な形、様々な媒体によってもたらされると思う。現在はこれまで以上にノンフィクションが重要だと思う。というのは、世の中に作り上げられたものが氾濫しているからだ。僕らは架空の時代に生きていると思うんだよ」

──2003年にはコロンバイン高校銃乱射事件をテーマにしたドキュメンタリーでアカデミー賞、ブッシュ大統領再選阻止を狙った「華氏911」ではカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを獲得されました。映画を作るために、あなたは大胆な行動をとり、身を危険にさらしたりしています。危険を感じていますか?

「確かに僕は危険なことをしてきた。でも身体的な危険は感じていないね。僕を消すというのはかなり難しいことだと思うよ。僕を一体どこに隠すというのかな?」

──最近、政府を批判したジャーナリストらがこの世から姿を消しています。トルコにあるサウジアラビアの総領事館に結婚の書類を取りに行って殺害されたジャーナリストの報道も連日、されています。

「彼はトルコで批判していた自国の総領事館に足を踏み入れたんだよ。僕の場合、ホワイトハウスのウエスト・ウイングに足を踏み入れることはないと思うよ」

(取材・文/高野裕子)

週刊朝日  2018年11月16日号

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