

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「文化祭」。
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「インプットする時間は大切です。様々なものを見聞きして吸収する、それがアウトプットに繋がるんですよ」とけっこうな人に言われます。わかってらい。そんなことくらい!「時間がない」なんて言い訳はしませんよ。いつも飲んでいるし。こないだも気づいたら終電がなくなり、タクシーで帰宅したら朝3時。布団に入ると、あっという間に家人に起こされました。
「今日は文化祭だからねっ!!」 そうだ、長男(中1)の学校の文化祭に行く約束をしていたのでした。頭痛い。完全な二日酔い。ていうかまだ酔っています。「10時に会場に着いてないと、いい席とれないからっ!!」。カミさんが怒鳴ります。どうやら1年生はクラス対抗合唱大会があるらしい。長男は男子校。男子のみの合唱なんて、想像しただけで宿酔に悪そうな……。「いや、これもなにかの『インプット』になるかもしれない!!」と、自分を奮い立たせて身支度をします。う……気持ち悪ぃ。
学校着。見渡す限り男子。なー、男臭い。声変わりし始めの微妙なビブラートの詰め襟ボーイたちが「ポップコーン、いかがっすかーっ!」「写真部でーすっ!」「12時から軽音のライブありまーすっ!」とか喚いています……頭蓋骨の内壁をすりこぎでゴリゴリ擦られるような感覚……。
フラフラと会場の音楽室へ。狭。ピアノと教壇と、お客用の椅子が80くらい。1年生は7クラス。順番に課題曲と自由曲を披露します。保護者で満員すし詰め、立ち見も出る大盛況。1年生だからまだ保護者も興味をもって聴きにくるみたい。それにしても空気が薄い……。