「長時間労働や不規則な時間の勤務などが続くと、食事も不規則になり、十分な睡眠・運動時間がとれないことなどから、高血圧や高血糖、脂質異常、肥満などのリスクも高まります」(※写真はイメージです)
「長時間労働や不規則な時間の勤務などが続くと、食事も不規則になり、十分な睡眠・運動時間がとれないことなどから、高血圧や高血糖、脂質異常、肥満などのリスクも高まります」(※写真はイメージです)
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 11月は「過労死等防止啓発月間」だ。「業務における過重な負荷」は心身に重大な影響を及ぼし、それにより脳梗塞や心筋梗塞などを起こして死に至ると「過労死」と認定される可能性がある。では、なぜ過労から脳血管疾患や心臓疾患になるのか。過労死対策にかかわる産業医に聞いた。

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 過労死や亡くならないまでも重大な障害を起こし得る疾患として、脳内出血・くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、解離性大動脈瘤などが労災補償では対象疾患となっている。長時間労働や大きなストレスが上記のような疾患を起こしうるメカニズムはまだまだわからないことが多いが、国際医療福祉大学医学部教授(公衆衛生学)の和田耕治医師によると、以下のような状況が想定されるとのことである。

「長時間労働や不規則な時間の勤務などが続くと、食事も不規則になり、十分な睡眠・運動時間がとれないことなどから、高血圧や高血糖、脂質異常、肥満などのリスクも高まります。また、忙しさで健診も受けなくなったり、受けて異常を指摘されても放置して受診せずということもあるでしょう。そうすると、脳血管や心臓の疾患のリスクも高くなる場合があります。高血圧などはとくに自覚症状はないため、気づかないまま悪化して重大な疾患を発症するケースが出てきます。さらに、心身への強いストレスなどを経験すると、さまざまなことが悪循環としてリスクを高め最悪の事態が起こり得るのです」

 和田医師らは、日本人男性を対象に、25歳から59歳まで、すなわち現役世代のうちに脳血管・心臓疾患で死亡するリスクを業種別に比較した。この調査での死亡と過労死の関連は不明だが、結果を和田医師は次のように解説する。

「小売業や製造業に比べて第一次産業とサービス業で働く男性で死亡リスクが高く、運輸業や建設業なども高めであることが明らかになりました。いずれも業務の性格上、時間の区切りなく働かざるを得ないケースが多く、長時間労働になりがちです。サービス業のなかでも飲食店関係では、飲酒や喫煙もされている方が多いことも背景にあるでしょう」

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セルフチェックが重要