元々同誌は硬派な事件物ノンフィクションを多く掲載し、長年出版界で独自の存在感を示していた。それがここ数年は、取材費のかかるノンフィクションを捨て、保守論客の論考が並ぶオピニオン路線にスタンスを変えていた。毎号売るためにオピニオンが過激化し、行き着いた先が今回の休刊である。
新潮社の強みは長年の歴史に裏打ちされた文芸部門。作家たちが離れていったら商売が成り立たなくなる。会社としては早い段階で幕引きをはかる必要があった。つまり、「炎上商法」が行きすぎて、自らも燃え尽きてしまったということだ。
他者の権利を毀損(きそん)する情報をビジネス的な事情を優先して公表したという点で、今回の騒動は2016年末に発覚したDeNAのキュレーションサイト問題に似ている。DeNAはしっかりした第三者委員会の報告書をもとに、問題点を検証した。新潮社も休刊で幕引きにするのではなく、なぜこのような事態に至ったのか、自ら検証してほしい。
※週刊朝日 2018年10月12日号