津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
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抗議などのため新潮社前に集まった人たち (c)朝日新聞社
抗議などのため新潮社前に集まった人たち (c)朝日新聞社

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。今回は「新潮45」休刊を取り上げる。

【写真】抗議などのため新潮社前に集まった人たち

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 新潮社は9月25日、月刊誌「新潮45」の休刊を発表した。

 事の発端は、同誌8月号に掲載された自由民主党の杉田水脈衆院議員の寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論考だ。

「LGBTだからといって、実際そんなに差別されているものでしょうか」「(LGBTは)子供を作らない、つまり『生産性』がない」──杉田議員の寄稿に含まれていたLGBTへの不理解、事実誤認、差別的な主張に多数の批判が殺到。LGBT当事者ら約5千人が自民党本部前に集まり、抗議を行った。

 批判は杉田議員本人のみならず、掲載した「新潮45」編集部や新潮社にも向けられた。新潮社側は、「個別の記事に関して編集部の見解を示すことは差し控える」と沈黙を貫いた。

 事態が動いたのは、9月18日発売の同誌10月号。「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という特別企画で、杉田論文を擁護する7人の寄稿を掲載した。7人の論考の中で、文芸評論家の小川榮太郎氏の寄稿は、悪い意味での反響を集め、ネット上で“大炎上”した。歴史と伝統のある出版社が安易なヘイトに手を染めたとして、怒りや悲しみの声があふれた。

 8月号のときにもネットでは話題になったが、今回は騒動が拡大。新潮社に寄稿する作家や学者、翻訳者たちが、ネット上で次々と同社への「絶縁宣言」を突きつけた。社内外からの批判が高まる中、9月21日、新潮社の佐藤隆信社長は声明を公表し、同誌10月号について「ある部分に関しては、あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」とコメントした。

 しかし、具体的に「ある部分」がどの著者の、どの表現を指すのか明らかにせず、LGBT当事者への謝罪や今後の再発防止策などもなかったことから、このコメントがより大きな反発を生むこととなった。

 週明けの9月25日、新潮社は声明を公表して初めて謝罪し、同誌の休刊を発表した。

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