「当時のカープは弱かったから使ってもらえ、育ったとも言える。強いチームなら試合に出られなかったでしょう。もっとも、彼は監督に『使おう』と思わせる選手でした。まず、ボールを遠くに飛ばす能力があった。それと、人の悪口を言わない。昭和スタイルというか、かわいげのあるバカもできる男。宴会で先輩に歌えと言われたら、『ハイ』と歌う男なんです」(ベテラン記者)

 そんな男が請われて球界の選手会会長に。そして、あの東日本大震災が起きた。開幕を目前に控え、興行を優先したい経営者側と向き合い、被災者の心情に配慮して開幕延期を決断した。

「あの下手くそが12球団の選手をまとめ、難しい決断をできる男になったんだなぁ」。前出の古参記者は感慨深そうに振り返る。

「さん」づけで呼ばれる新井だが、元々は広島、阪神時代の先輩・金本阪神監督らがふざけて「新井サン」と呼んだことが起源と言われる。「イジられて“サン”づけされたのが、いつのころからか、敬われて“さん”づけに。彼の人間力。そういうやつなんですよ」。新井を知る記者の評だ。

 日本シリーズでも、最後の感動のプレーを見たい。(渡辺勘郎)

週刊朝日  2018年9月28日号

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