そして、その分、歯科医師は治療に専念でき、互いが得意な仕事に従事することで、よりよい治療ができます。例えば入れ歯やかぶせ物などの補綴(ほてつ)物を作る際に、歯科医師が歯の型取りをします。型が合うかどうかはミクロン単位の違いがあり、このとき出血があると正確な型が取れません。
そこで歯科衛生士に歯や歯ぐきをきれいにしてもらい、そののちに型を取ると、驚くくらい正確な型を取ることが可能になるのです。
型の採取後、補綴物を作るのは歯科技工士の役割です。熟練した歯科技工士の中には歯科衛生士の資格を取っている人もいます。歯科衛生士の技術を学ぶことで、より精巧な補綴物を製作したいというこだわりからです。
■男性の歯科衛生士もいる
なお、「女性の職業」という印象が強い歯科衛生士ですが、最近は男性も少しずつ増えてきました。以前は歯科衛生士法で女性だけの職業と定められていたのが法改正により、男性も歯科衛生士の資格を取得できるようになりました。
私が知っているだけで男性の歯科衛生士は3人いますが、みなさん、勉強熱心です。ちなみにそのうちの1人とは勉強会で会ったのですが、最初は女性と一緒にいたので、歯科医師だと思っていたのです。聞くと逆で、女性のほうが歯科医院の院長でした。
このように、歯科医師の世界は男女の区別がなく働きやすいところです。歯科衛生士についても、やる気のある男性にはどんどん、参入してきてほしいですね。
最後に、最近では歯科衛生士や歯科助手のほかにも、看護師や保育士、さらにデンタルコーディネーターと呼ばれる職種を置く歯科医院も出てきています。
保育士は患者さんのお子さんなどを預かる役割、看護師はインプラントや歯周病で行う骨再生の治療などのために血液採取を担当することが多いですね。看護師は同時に歯科助手も兼ねていることが多いようです。
デンタルコーディネーターは歯科医師に代わり、治療の詳細を患者さんに説明する役割を担います。
職種や名前は名札に明記されているのが一般的です。また、待合室やホームページなどに紹介されていることもあります。
主治医が他のスタッフにバトンタッチする場合は、「歯の清掃ですので、歯科衛生士の◯◯に交代します」
という具合に説明があってしかるべきですが、それがない場合は、「どんなことをする専門家なのですか?」と遠慮なく聞いてみてください。
口の中の治療は自分でみることができない分、不安を感じやすいことは確かです。疑問を解消することで、ぜひ、安心して治療を受けてほしいと思います。
◯若林健史(わかばやし・けんじ)/歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演
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