

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「高嶺の花」(日本テレビ系 水曜22:00~)をウォッチした。
【今週のイラストはこちら】石原さとみにやらせたい“夢のプレイ集”
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サイケデリックな花の映像&爆音と共に浮かび上がるタイトル。思わず「伯・方・の・塩!」のイントネーションで読み上げたくなる「高嶺の花」なのだ。
華道の名門に生まれた美貌の娘もも(石原さとみ)と、平凡な自転車店主・風間(峯田和伸)の格差恋愛。脚本・野島伸司だけに、何から何までクセがすごい。
結婚式当日、婚約者の二股交際が発覚して破談。自転車こいで一心不乱に、元婚約者を追いかけるさとみ。勢いあまって水に落ちる。
全身ずぶ濡れで自転車店に飛び込んできた。初対面のあなたの家で、着替えがしたいと言う。
そして、ある日はさとみと地元のスナックで朝までカラオケだ。あなたの家で一緒に食べる朝ごはん。納豆をぐるぐるかき混ぜながら、彼女は言う。
「もしかして、私に『ある』とか思ってる? ワーンチャーン(ス)」
ちゃぶ台の下、さとみの足があなたの土踏まずをチョイチョイする。って、なんだこれ、どう見ても「僕がさとみにやって欲しい夢のプレイ集」でしかない。
そのうえ、さとみがキャバクラに体験入店してくれて、「こんばんちゃ!」って、お前以外の女が言ったら、たぶんぶっ殺す的ナゾ挨拶をしてくれる。
なんせ、さとみのセリフはいちいち突拍子もなくて、画面に字幕を出さないと理解できないレベル。元婚約者と話している最中に放った言葉がこれだ。
「なんだ、力学だったんだ、ワタシ」。はぁー? とりあえず3度は聞き返したい。
「力学的に苦しくなってただけなんだなぁって」
そう言って、さとみは突然叫びだす。「キーンコーンカーンコーン!」。おい、救急車。「チャイムが鳴った、放課後のチャイム。あなたも私もおうちに帰るの、バイバイって」
これがさとみの、元婚約者への別れの言葉。力学からキンコンカン。予想がつかなすぎて、セリフが闇鍋状態だよ、さとみ!
そんなさとみに、絶賛振り回されたい物語。きっとこれから誰かが刺されて、誰かは犯され、誰かは高い所から転落する。
同情するならむしろ金をくれって言われて、それでも男はダンプカーの前に飛び出して、「僕は死にまっしぇーん! あなたが好きだから」と、さとみに101回プロポーズするんだ。だって野島伸司なんだから。
※週刊朝日 2018年8月10日号