

一橋大学名誉教授の石弘光さん(81)は、末期すい臓がん患者である。しかも石さんのようなステージIVの末期がん患者は、5年生存率は1.4%と言われる。根治するのが難しいすい臓がんであっても、石さんは囲碁などの趣味を楽しみ仲間と旅行に出かけ、自らのがんを経済のように分析したりもする。「抗がん剤は何を投与しているのか」「毎日の食事や運動は」「家族への想いは」。がん生活にとって重要な要素は何かを連載でお届けする。
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がんに罹患したからと言って、すぐに死ぬわけではない。たしかに死に至る病ではあるが、通常は数年単位で闘病生活を送ることになる。逆にそれだけ、自分の人生の幕引きに時間的な余裕を与えられることになるとも言える。そこでこの間、がん患者はがんと向き合い、明るく元気に生きることを心掛けるべきである。
■末期すい臓がんでも、見かけは健康そのもの
この際、最も重要なことは全てにおいて前向きに生きることである。がんになると落ち込んでうじうじこれまでを振り返り、後悔の念にとらわれる人もあるだろう。過去を反省しても、何ら生産的なことは出てこない。自分の置かれた厳しい現状をできるだけ正確に把握し、そこでできることを将来に向け精いっぱいやるべきである。
私は末期すい臓がんといわれても、明るく元気な患者でいたいと念じている。見かけは全く健康そのものに見えるらしい。79歳2カ月でがんが発見されたが、その3カ月前までは毎年スキーを楽しみ、スポーツジムで週に2回はトレーニングをしていたのだから、体力からくるオーラがそのまま体外に発散しているのだろう。身のこなしが敏速で、だるさ・倦怠感からくる疲労感が、表に出ないようだ。
抗がん剤の副作用で顔がむくみ、皮膚の色素沈着で顔色が変色したときにも、久しぶりに会った友人から「太って雪焼けして元気そうだな」と言われたことがよくある。そのたびに事の顛末を説明せねばならなかったほどであった。