ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。まとめサイト「保守速報」に下された司法判断の意味を解説する。
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まとめサイト「保守速報」の管理人が訴えられた裁判で、大阪高裁は6月28日、まとめ行為による名誉毀損(きそん)を認定した一審判決を支持し、控訴を棄却した。一審に続き、二審でも保守速報側が敗訴した。
保守速報は、「嫌中・嫌韓」にもとづく差別的な投稿が多数ある掲示板「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)の書き込みを転載している。多数あるまとめサイトの中でも攻撃的、扇動的で、ヘイトスピーチやデマの温床ともなっている。
この裁判は、保守速報に出自や性別、容姿を中傷する複数のまとめ記事を公開された在日コリアンのフリーライターが、「名誉毀損、侮辱、いじめ、脅迫、業務妨害」に当たるとして訴えていた。保守速報のまとめ記事が、転載元の投稿とは異なる新たな意味合いを持つかどうかが、争われていた。
2017年11月の一審判決では、「ネット上の第三者の書き込みを集約しただけ」という保守速報側の主張を認めなかった。書き込みの選別、加工、並び替えなどにより、「新たな意味合い」をもたせたとして、まとめサイトによる名誉毀損や人種差別を認定。200万円の損害賠償を命じていた。
今回の二審判決では、まとめ記事は情報の集約に過ぎないとする保守速報側の主張に対して、一審判決よりも踏み込み、管理人が「一定の意図」に基づいて作成したものであり、転載元とは「独立した別個の表現行為」であると指摘。さらにその表現は転載元よりも「より強烈かつ扇情的」になっているとした。
名誉毀損や侮辱についても、人種差別および女性差別を含み「悪質性が高い」とし、一審判決よりも踏み込んで、保守速報側に厳しい判断を下した。
こうした判決の積み重ねは極めて重要な意味を持つ。6月上旬には、保守速報に広告を掲載していた企業が、相次いで広告の引き揚げを明らかにしている。多くの場合はネット広告の複雑な仕組みゆえに意図せず掲載されていたのだが、保守速報の記事を問題視する一般ユーザーからの問い合わせを受けて、不適切なサイトであることを認識し広告配信を停止した。