そして、米国は北朝鮮にCVID、つまり、完全で検証可能かつ不可逆的非核化を要求しているが、リビア方式を取らないというのは、CVIDを緩めることになるのではないか。

 金正恩氏としては、非核化をできるだけ高く売りつけ、しかもできるかぎり先延ばしにしたいはずである。核を保有しているからこそ大国の米国と渡り合えるのだが、非核化したら単なる弱小国になってしまう。また、核がないゆえに潰されたイラクのフセインやリビアのカダフィのこともよく知っている。そんな金正恩氏にトランプ氏はどう挑むのか。

 8日には、ワシントンで安倍首相がトランプ氏と会談する。安倍首相は拉致問題とCVIDの目的達成をどこまでトランプ氏に迫れるのか。

 そしてトランプ氏は、北朝鮮の非核化とIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れさせるという決着をどこでつけるつもりなのか。大統領でいる間に決着をつける決意と自信を持っているのだろうか。

週刊朝日  2018年6月22日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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