ジャーナリストの田原総一朗氏はすぐに考え方が変わるトランプ大統領に疑問を抱く。
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6月12日に、シンガポールのセントーサ島にあるカペラホテルでの、米朝首脳による歴史的な初会談が決まったようだ。
トランプ大統領はすぐに考え方が変わる。ホワイトハウスの幹部たちも誰も先が読めない。だから、この原稿を書いている7日現在でも、突然の破綻があるのではないか、という不安感がアメリカ国内にもある。
3月5日に韓国の特別使節団が北朝鮮を訪問して、金正恩委員長と面会したとき、金正恩氏は、もしも米国がわが国の安全を保証してくれるのならば、われわれは核兵器を所有する必要がなくなる、と語り、朝米首脳会談を行いたい、と表明した。この表明には世界中が仰天した。北朝鮮は米国をはじめ、世界中から強く非難されながらミサイルの発射や核実験を繰り返し、トランプ氏と激しくののしりあっていたからである。
そして日本政府は、北朝鮮はこれまでに何度も世界を裏切り続けてきたのだから、金正恩氏の言うことなど、まったく信用できない、トランプ氏が相手にするはずがない、と言い切っていた。実は、ホワイトハウスの幹部たちも、トランプ氏は会談に応じないだろうと引いて構えていたのだが、トランプ氏は使節団に会い、誰にも相談しないで米朝会談に応じると言い切った。これには、金正恩氏の表明以上に世界中が驚愕した。
そしてトランプ氏は米国民に向けて“ブッシュやオバマは何もできなかった。しかし自分は北朝鮮を戦争するぞと言って脅かし、国連を巻き込んで、圧力をかけ続けた。だから金正恩は屈服したのだ、オレは勝ったのだ”と強調した。彼の頭の中は秋の中間選挙で占められていて、選挙で勝つためには北朝鮮に非核化を承諾させることだ、と判断したのだろう。その後、一度は中止を宣言したのだが、12日に史上初の米朝首脳会談が決まった。
ところで、会談を前にトランプ氏は、会談のあり方を少なからず変えた。まず、リビア方式は取らないと言い、12日は会談のはじまりだと語った。つまり何度も会談をするということだ。さらに“最大限の圧力”という表現をしないとも言った。また、米国は“北朝鮮の”非核化と強調しているが、南北首脳会談では、“朝鮮半島の”非核化ということになった。朝鮮半島の非核化なら、核を保有する米軍は韓国から撤退しなければならないことになる。トランプ氏はこの問題をどう捉えるのか。