現在、40代ど真ん中。鈴木おさむには「人生で一番しんどい世代」という自覚がある。
「30代のときは、仕事をガリガリやってさえいれば、頑張ってると思ってもらえるし、50代になれば、60~70代の大御所と呼ばれる人たちから“一人前”として認めてもらえる。でも、40代では、何をやっても中途半端な気がしてしまうんです」
その“しんどさ”を逆手に取って、40代のうちに、やれることは全部やってしまおうと考えた。どんなに苦労しても、たとえ失敗しても、「40代の今が踏ん張りどき」として、気持ちを鼓舞できると思ったからだ。そうして、これまで映画やドラマの脚本、舞台の演出などを手がけてきた鈴木さんが、映画「ラブ×ドック」では自らメガホンを取った。
「自分が得意とする“恋愛もの”の脚本が完成したとき、『他の監督に頼んで、あれこれ口を出すくらいなら、自分で全部責任を取ってしまおう』と思ったんです。日本だと、大人の女性が主人公の恋愛ものってあまりないけど、ハリウッドなら結構ある。10年以上前、10代の頃キラキラムービーを観ていた世代に、大人向けの等身大のキラキラを届けたかった。でもこれ、女性向けの映画を装いつつ、実は男性から、『観ていて胸が痛かった』って感想をよく聞きます(笑)。男性が女性を口説くときの“あるある”が、ギュウギュウに詰まっているせいでしょうね」
物語を紡ぐ技術は、すべてバラエティーの構成作家業の中で培われたという。ミニドラマやコントの脚本を書くことや、「この女優さんにこういう台詞を言わせてみたい」と妄想すること、音楽やファッションなど、第一線で活躍するクリエーターとの出会い。それらすべての“点”を、映画という“線”でつなげることで、一つの作品が生まれた。