「映画というのは、監督がいて、映像を撮るカメラマンがいて、俳優がいて、音声、照明、美術スタッフなど、様々なプロが、最善を尽くして生まれるものです。だから、僕の記憶の中にも、実際にこの目で見た風景より、映画を通して見た日本の美しさがいっぱいあります。映画に携わることの醍醐味は、作品が何十年も残っていくこと、その作品に、世代や国籍を超えて、人が影響されていくことにあると僕は思うのです。親の教育だったり、友人との関係だったり、人間は、いろんなことに影響されながら生きているけれど、僕の場合は、成長過程で、映画からもたくさんの影響を受けてきましたから」

 物静かなトーンで話す姿からは想像できないが、大学の同級生とバンドを組み、ロッカーとしても活動している。実は、反骨のエネルギーを内包しているのだろうか。

「確かに若い頃は、社会に対して不満だらけでしたね(笑)。理解できない出来事が多すぎて、その溢れる怒りや不満を、ギターを演奏することや歌うことで解消していたのかもしれない。とはいえ、ずっと映画に影響され、映画に憧れてきた僕の本業はあくまで俳優です。バンドは、ピュアに好きなことを追求する場なので、そこでお金を稼ごうとは思っていない。メンバー全員、大学の同期ですが、それぞれに本業があって、“やりたい音楽だけをやる”という部分では、すごく気が合うんです」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日 2018年5月18日号

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