4月1日、奈良県生駒市の5階建て市庁舎のエレベーター内のポスターにこんな文字が掲載された。
「喫煙後45分間は、使用をご遠慮ください」
たばこを吸う人のそばにいるだけで、健康被害を受ける受動喫煙はよく知られている。だが、喫煙後45分間もダメ、とはどのような根拠に基づくのか。
市担当者によれば、きっかけは保健師が出席した研修の講演。産業医科大学の大和浩教授(健康開発科学)による、たばこの害に関する研究データが紹介された。たばこを1本吸って室内に戻った人が吐く息に含まれる総揮発性有機化合物の濃度を調査したところ、吸う前の濃度に戻るのに最低でも45分間かかったのだ。大和教授が言う。
「たばこには、防腐剤や香料など多くの添加物が加えられている。それらが燃焼して、発がん性のあるホルムアルデヒドやニトロソアミンなど7千もの化学物質が入った混合物になるわけです。さらに、これらはシックハウス症候群の原因にもなります」
たばこから発生する煙は霧状のタールである。タールは口やのど、気管支の粘膜に付着し長い間、化学物質が揮発し続ける。息に含まれるそれらの化学物質が、吸う前の濃度に戻るまで45分かかる、ということなのだ。また、洋服の繊維に入り込んだタールも化学物質の発散源となる。