ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。フェイスブックの個人情報が大量に流出した件について解説する。
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米ニューヨーク・タイムズ紙は3月17日、2016年の米国大統領選挙でトランプ陣営を支援した選挙コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」がフェイスブックユーザー5千万人分もの個人データを不正に取得し、使用していたと報じた。
フェイスブックの16日の声明によると、流出が疑われるデータはケンブリッジ大学の心理学者アレクサンドル・コーガン氏が14年に、フェイスブック上の性格診断アプリを使用して「研究目的」で収集したものだという。このアプリを使用したのは約27万人だったが、当時のフェイスブックの規約はユーザーの友達のデータへのアクセスを認めていたため、5千万人分ものデータが収集された。
今回の件を告発したケンブリッジ・アナリティカ社の創業メンバーであるクリストファー・ワイリー氏によれば、コーガン氏は初めからケンブリッジ・アナリティカに提供するためにデータを収集したのだという。ケンブリッジ・アナリティカはコーガン氏にアプリ開発費用として80万ドル(約8500万円)を支払い、データの提供を受けた。15年にこの情報流出を認識したフェイスブックは、ケンブリッジ・アナリティカにデータの破棄を要請し、それを確認したという。しかし今回の報道により、データが破棄されていなかったことが明らかになった。
ケンブリッジ・アナリティカは行動履歴データにもとづくマイクロターゲティングによって「有権者の投票行動を変える」ことをうたい、英国のブレグジット(EU離脱)の国民投票や、トランプ大統領の勝利に貢献したとして一躍注目を浴びた企業だ。
行動履歴データから予測されたライフスタイルや性格、信念、価値観といった心理的特性を、投票行動を変えさせるためのターゲティング広告などに利用する──同社はまさにその目的でデータを入手した可能性が高い。