就職情報のマイナビの吉本隆男編集長も「ベンチャーはどれだけ優秀なエンジニアを採用できるかが成長の原動力となる」と指摘する。

 リクルートキャリアの就職みらい研究所の岡崎仁美所長は、初任給が高い企業は目立つメリットがあるという。

「初任給が突出して高いと、大企業より知名度が低いところでも学生に目を向けてもらえる。金額に応じてふさわしい人材が集まってくる『スクリーニング効果』も期待できる」

 初任給引き上げの流れは全体的に広がっている。リクルートワークス研究所の2019年の新卒採用の調査では、初任給の引き上げに取り組んでいるところや、今後取り組む予定とする企業は4割を超えた。

 新卒者に一律で同じ給料を支給する仕組みも、変わりつつある。

 フリーマーケットアプリ大手の「メルカリ」は、個人の能力などに応じた初任給の導入を発表した。「新卒者にはそれぞれのスキル・経験に差があり、一律の初任給では適切な評価が難しい」として、個別に年収を提示する。

 ソフトウェア開発の「サイボウズ」も職種により初任給に幅を設けている。人事担当者によると、以前は一律だったものを変更した。募集要項ではエンジニアで30万~39万円、ビジネス職で28万~35万円としている。エキスパートエンジニアに該当すれば新卒でも40万円以上もあり得る。

 初任給が高いのはうれしいが、その分、仕事内容は厳しくチェックされる。成果主義が徹底され、給料は結果に応じて見直される。営業成績が良かったり、ヒット製品を開発したりすれば、入社数年目で年収1千万円も夢ではない。一方で、成果が下がったと判断されれば昇給は望めず、給料が引き下げられるリスクがある。

 初任給は高くても昇給が抑えられると、長い目で見れば年功序列型賃金のほうがトータルでもらえる額が大きくなることも考えられる。

 常に成果を上げるために、働き方もハードになりがちだ。今回紹介した企業はともかく、新入社員でも長時間働く企業は珍しくない。なかには高い給料で集めた人を酷使し、次々に辞めさせていく「ブラック企業」もある。うまい話には“罠(わな)”がありがちだ。就活支援をしている都内の私立大学教員はこうアドバイスする。

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