

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「春なのに」。
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3月某日。岡山へ独演会に行った。午前中に岡山駅近くのホテルにチェックイン。開演時間まで6時間半ある。出無精な私は、普段ならホテルの部屋で有料チャンネルを片っぱしからチェックするところだが、「『春なのに』そんなことしてていーの?」と、頭のなかで柏原芳恵が囁いた。」
フロントに聞くと「倉敷はいかがですか?」。電車で20分、奇麗な街らしい。行ったことない! 春なんだから、それくらいの小旅行はしてみよう。サンキュー芳恵! さらばVOD!
倉敷に着いた。駅前のデッキを降りると『barber 毛美刈』の看板。毛美刈(ケミカル)。理髪店の名前としては効きすぎたパンチ。倉敷、俄然楽しくなってきた。
古い蔵を利用したお洒落なギャラリー・甘味処・レストランが軒を並べている。人力車や川舟には女子率高し。「THE・観光地だなぁ……」。おじさんにはちょっと居心地が悪い。
路地に入ると『星野仙一記念館』の看板が! おじさん、テンションがあがる。500円払って迷わず入館。私以外には外国人の親子しかいない。10歳くらいの金髪の女の子は不機嫌そうに「ワット?」「フー?」「ソー・タイヤード!」を繰り返していた。そらそうだろう。私は『仙一の半生VTR』3回観た。元は取ったぞ。