高血圧は脳卒中を引き起こすという説が、現代医療の常識となっている。血圧が140を超えると降圧剤が処方され、生涯飲み続けることになるが、薬で血圧を下げると、かえって脳梗塞のリスクが高まるという調査結果もある。本当に薬で下げる必要があるのか。
病院で血圧を測ったら、上が160もあった。医師から高血圧症と診断され、降圧剤を処方された。しかし、その血圧は本当に自分の数値なのだろうか。
『高血圧はほっとくのが一番』などの著書があるサン松本クリニック院長の松本光正氏はこう語る。
「血圧は一日のうちでも大きく変動し、平気で50や60は上下します」
松本氏自身の場合でも上の血圧で見ると、起床時は110くらい、車に乗って職場に着くと130になっている。さあ、これから仕事をしようという心構えもあって上昇するのだ。仕事を終えた直後は、緊張感が持続して160に。駅の階段を上っているときなどは、200近くになるという。患者が診察を受けるときも「白衣高血圧」といって、緊張して血圧は上がるもの。松本氏が続ける。
「患者さんに階段を駆け上がらせて、てっぺんで医者が血圧計を持って待ち構えているようなもの。それで『あなた、血圧高いですね。薬飲みなさい』というのが今のやり方です。一番のんびりしている時間帯に測って、低ければ何も問題はない」
しかも、高血圧の診断基準はどんどん下げられてきた。1983年に厚生労働省(当時・厚生省)が老人保健法による基本健診を開始したときのガイドラインでは、正常血圧は収縮期140mmHg未満/拡張期90mmHg未満を基準とし、医療機関での受診を勧める「要医療」は180mmHg/100mmHg以上だった(以降、単位は略す)。
ところが、臨床学会である日本高血圧学会が2000年、正常血圧を130/85未満とし、140/90以上を高血圧と判定した。このため、治療の対象者数は190万人から一気に2670万人まで増加したのだ。08年、特定健診(メタボ健診)のスタート時には厚労省も学会の基準に倣っている。高血圧学会は14年にもガイドラインを出しているが、140/90以上を高血圧としたままだ。