――経済合理性と比べ、哲学的な面は、評価が難しいのではないですか
「その点は、大学での学生の評価でも感じます。例えば、二人の学生にプレゼンをしてもらうとします。二人ともほぼ徹夜で30枚ほどのスライドをつくって準備する。一人は自分の論理展開の誤りに途中で気づいたが、強引にまとめて30枚のスライドで発表する。もう一人は同様に論理の誤りに気づき、スライドを大幅に削った。わずか10枚ほどとなり、一見すると、見劣りする内容になった。
こうした時に、誤ったロジックでも堂々と発表する人と、自分に正直に貧弱な発表をした人に、それぞれどんな評価を与えるか。人を見る側も問われます。
企業の人事評価でも、業績は高いが不正を行うような人と、業績はやや劣るが誠実な仕事ぶりの人をそれぞれどう評価するか。業績など目に見えやすいものばかり追っていると、危険な組織になってくる。経済合理性と哲学的な側面とを重層的に評価することが大切であり、それこそがリーダーの大きな役割でしょう。
(構成=本誌・中川透)
※週刊朝日 2018年2月23日号より加筆