かねて“やりたい”と思っていた題材、役にぴったりだと思う俳優、一緒に仕事をしたいスタッフなど、30年分の経験と人との出会いとが、この舞台で結実したことになる。

「最近は、これまでのいろんな出会いが一つにまとまるケースが多いですね。脚本の仕事は、俳優さんありきなので、僕の場合、“次に何やろうか”って、途方に暮れることがないんです。素敵だと思った俳優さん、またご一緒したいと思った俳優さんがいたら、出ていただくなら何がいいかを考える。俳優さんたちとの出会いがある限り、自然にアイデアは生まれていくものなんです」

 かつてのインタビューで、「夢は、アメリカのアカデミー賞の受賞スピーチで、笑いを取ること」と答えていた。「今の夢は?」と訊ねると、「正直、ここ20年で、すごく面白いと思ったアメリカのコメディーはないので、そこに自分が出ていきたいとは今は思わない。でも、日本人が海外に出ていって、英語でスピーチをして笑いを取った話を聞いたことがなくて。そこに一石は投じたい」と言う。

“賞”や“栄光”よりも身近な“笑い”を──。ものを作るときの一途さは、20代の頃から変わらぬままだ。

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2018年2月23日号