深野さんによると、より有利な商品に預け替える行為が運用なので、普通預金を定期預金にすることも立派な運用になる。慣れてきたら、元本保証のない世界へ入ってもOKだ。「深野流」は理屈を考えない。「習うより、慣れろ」で、まず始めてみることを勧める。

「1冊だけ投資の本を読んだら、わからないことがあっても少額で始めてください。投資対象は、好きなものなら個別株でも投資信託でも何でもいい。実際に始めてみると、わからないことがいっぱい出てきますが、まずは実際に体験して自分で考えてください。そして徐々に投資の幅を広げていけばいい」

 野村証券に定年まで勤め経済コラムニストに転じた大江英樹さんも、少額から始めて失敗しながら覚えていくことを勧める。

「最初のうちに、いろいろと経験をすることが大切です。例えば、個別株を買ったら、株価が上がれば喜び、下がれば悲しむなど、大いに一喜一憂すればいい。株価の動きで自分の心がどう動くかを観察してください。そこから、いろいろなことを学び成長してほしい」

 具体的な手法よりも、「なぜ、運用が大切なのか」を、若い世代にしっかり伝えておきたい。深野さんが言う。

「給料が上がらない時代は、今あるお金に働いてもらわないとお金が増えていきません。今や運用は生きていくために必要な『たしなみ』のようなものなのです。また、iDeCo(イデコ)やつみたてNISA(ニーサ)など運用益を非課税にする制度を国が次々に充実させ、個人が運用に励むことを促しています。『今までのような手厚い社会保障はもうできないから、自助努力で補ってほしい』とする裏の意味があるのですが、その流れに乗りつつ、これからは一生、運用を続けていく必要があります」

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 厳しい時代だが、希望はある。FPの藤川太さんが言う。

「若い世代はネットから情報を拾ってくるのが得意で、自分でキャッシュフロー表を作って相談に来る人もいます。総じて堅実でしっかりしている。ちゃんと稼げるようにさえなれば、きっとすごい資産を作りますよ」

 新しい成長をめざして、シニアももうひと踏ん張りしなければならないのかもしれない。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2018年2月16日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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