2018年も北朝鮮の“挑発”は続きそうだが、米国が先制攻撃を仕掛けるケースを想定した“軍事マニュアル”の全容が韓国で明らかになった。
【米韓合同軍事演習に参加した米空軍F16とF35Aはこちら】
根拠となるのは、2017年12月4~8日に実施された米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」だ。日本では戦闘機や偵察機など米韓両軍で230機が参加したと伝えられていたが、11月29日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」発射したことを受けて260機に増強され、史上最大規模の軍事訓練となった。韓国在住のジャーナリスト、裵淵弘(ベ・ヨンホン)氏がこう語る。
「詳細はこれまで明らかにされてこなかったのですが、訓練内容を分析した文書を見ると本当に実戦さながらです。米軍が本当に先制攻撃を仕掛けた場合、その攻撃力は想像を絶します。北朝鮮は報復攻撃さえできずに、早ければ1日で壊滅すると考えられます」
これまで米国が北朝鮮に対して先制攻撃を実行した場合、全面戦争に発展するのは避けられず、北朝鮮の報復攻撃によって日米韓は甚大な被害を受けることが予想された。
特に非武装地帯(DMZ)の北方に配置された北朝鮮の多連装ロケット砲や長距離砲がいっせいに火を噴き、付近に展開している米陸軍第2歩兵師団が標的になるばかりか、ソウルが“火の海”に化す悲劇も現実味を帯びていた。
過去、米国はクリントン政権時代の1994年に北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがあった。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」の発射を強行していたからだ。だが、米国が空爆を実行すれば、朝鮮戦争の再開が危惧された。開戦から90日で米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、韓国の民間人の死者は100万人以上に達するという衝撃のシミュレーション結果を、当時の在韓米軍司令官がホワイトハウスに報告し、攻撃を中止したという経緯があった。
いま、ICBMの完成を目前にして、核弾頭の量産体制に入ったとも見られる北朝鮮の“脅威”は当時の比ではない。当然、米国本土も無傷では済まないはずだ。
ところが、この想定は米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」によって覆されるかもしれないというのだ。米韓両軍が先制攻撃で遂行する作戦とは、一体いかなるものなのか。裵氏が説明する。