「飼い主だけがわかる、その猫独自の言葉も多いが」と前置きして、太田教授が教えてくれたのは三つ。
まず高めのトーンで、語尾をちょっと上げることもある大きな声の「ニャーーン」だ。これはだいたい、「おなかすいた、何かくれ」のメッセージだ。
そういえば、いつもは話しかけても知らん顔の近所の外猫が、たまにうるさいくらい「ニャーーン、ニャーーン」と話しかけてくることがある。あれはさしずめ「顔見知りのよしみで、何かいただける?」という話だったのか。スルーしてました、すみません。
もうひとつ、文字にすると同じ「ニャーーン」でも、あまりトーンが高くない「ニャーーン」。これは「遊んで」とか「かまって」という意思表示であることが多い。この猫語を聞き逃してしまう飼い主は少なくないとか。
「捕ったネズミを人に見せるなど、猫は遊びが大好き。これを言われたら、猫との絆を深めるためにも、必ず遊んであげることです」(太田教授)
そして三つめ。「ミャ」「ニャ」などの短い鳴き声は、「はいよ」的な「返事」として出てくることが多いという。
一方、喉を鳴らすゴロゴロ音のほうは、けっこうややこしい。「心地いい」ときに発するとか、逆に「ストレスを感じている」ときにも発するとか。太田教授は、カリフォルニア大学の研究に注目している。猫などが発するゴロゴロ音が、低周波治療器の代わりをしている可能性があるらしい。
猫が喉を鳴らす際、20~25ヘルツの比較的低周波の音が発せられていることがある。この低周波には、ネズミに噛み返されて生傷が絶えなかった猫たちが、自分で傷を治すために発するようになったというのだ。
「この低周波は近くにいる人にも伝わり、ある種の癒やし効果を与えると言われています」(同)
飼い主がしょんぼり落ち込んでいるとき、猫がいつの間にか「近くで座っていた」とか、「膝の上に乗ってきた」という体験をする飼い主は多い。これは「人の心拍数などの変化を敏感に感じ、何が起きたのかチェックしにくる」(同)行為。そこでゴロゴロと喉を鳴らせば、傷ついた飼い主に低周波のプレゼントをしているのかも。ジーン。