17勝5敗、防御率1.59の巨人菅野が2億円以上の大幅昇給で来季年俸が4億5千万円になるという。今年の流れを見ると、各球団で先発投手への査定ポイントを高くするよう見直されたのではないかな。
今や、1億円、2億円という昇給額は当たり前になった。選手は球団に感謝しないといけない。私の頃の野球界は、オーナー企業に頼り切りで、球団は赤字になっても「宣伝広告費」という名の補塡があった。だが今は違う。球場をボールパーク化し、企画も多岐にわたり、営業努力により、独立採算で黒字という球団ばかりだ。だからこそ多額な年俸を出してもらえる。さらに言えば、お金を生み出してくれるファンの方々がいる。絶対にそのことは忘れてはいけないよ。
私は86年シーズンの後、87年の年俸で1億円となった。先にロッテから中日に移籍した落合博満が球界初の1億円プレーヤーとなっていた。だけど、私にも意地があった。その年、広島との日本シリーズで史上初の第8戦までもつれ込んで日本一になった。個人の成績もさることながら、チームの優勝に貢献できた。下交渉では、9500万円。当時の球団代表の坂井保之さんに、契約更改交渉の席上で「500万円を自分で払うから1億円にしてくれ」と懇願した。坂井代表は外へ出て、オーナーか誰かと話していたのだと思う。その意気を感じてくれたのか、1億円を提示してくれた。机の下で「0」が8個あることを指を折って確認したことを思い出す。
30年前は1億円がまさに「大台」として壁になっていた時代だった。そう考えると、今の時代に野球ができる選手は幸せだし、うらやましいと率直に思う。
※週刊朝日 2017年12月22日号
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