室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
(c)小田原ドラゴン
(c)小田原ドラゴン

 衆院選最終日の各党党首の訴えを作家・室井佑月氏が振り返る。

【イラストはこちら】

*  *  *

 この原稿を書いている今日は、衆議院選挙の投票日。大型台風が近づいていて、全国的に雨降りのところが多いみたいだ。そうテレビの天気予報でいっていた。

 あたしは1週間前に期日前投票済みで、今は四国の愛媛にいる。こっちも雨や風が酷(ひど)く、JRが止まってしまうぐらいだ。買い物に出かけたら傘がひっくり返って、びしょ濡れになってしまったよ。

 テレビに映った街中の風景には、人がぜんぜん映っていなかった。やっぱり、こういう天気だと、投票率は低くなるのかしら? となると、組織票をがっつり固めているところが有利よね。マスコミがいっていたように、自民圧勝となるのだろうか? 平和憲法と立憲主義を守るまっとうな政治の、枝野幸男代表が率いる立憲民主党は、後半からかなり追い上げてきたけれど。

 昨日の晩、インターネットで、各党首の最終日の訴えを観た。新宿での立憲民主の街頭演説は、かなり多くの人が集まっていた。枝野代表や福山哲郎幹事長は、聴衆から押されて台に上がって演説している人のように見えた。そのくらい大勢の聴衆と、一つの大きな熱い固まりになっていた。

 池袋での希望の党の訴えも観た。小池百合子代表は少ししか演説をしなかったが、彼女が出て来ると、聴衆から歓声がパラパラと上がった。どうせその場にいるのだから、若狭勝さんだけになったときにも、声援を送ってやればいいのに。あたしなら、義理でしてしまうかも。あ、あたしはあっこにはいかないか。

 おなじく池袋。共産党の志位和夫委員長の演説は、選挙戦の最終の訴えをしているというより、大仏さまのお語りみたいに聞こえた。隣にいる立候補者の女性が小柄だったからか、マジでデカい大仏に見えた。

 そう思ってしまうのには理由がある。今回の選挙のドタバタの中であっても、大人な態度を一貫させたのが共産党だ。脱原発や安保のデモなどで一緒になった市民との約束を守るため、立憲民主が小選挙区で候補者を立てると、自ら候補者を降ろした。金をケチったという下劣なデマを流す識者も現れたが、そんなことをすれば、比例の得票数に響くのだ。あたしは彼らの態度は、立派だと思った。

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら
次のページ