それを裏付けるのが9月に明らかになった政府の全額補償だ。今回の日立の原発輸出プロジェクトに関して、日本のメガバンクが融資する建設資金の全額を、政府が日本貿易保険(NEXI)を通じて補償する方向であることが報じられた。通常、民間融資が焦げ付いた場合のNEXIの補償は90%から95%ほど。全額は異例だ。

「今回のプロジェクトでは英国政府と日立、それに日本政策投資銀行と国際協力銀行も融資を実施する見込みですが、総額2兆円を超えるだけに民間融資が不可欠。しかし、原発輸出は貸し倒れリスクが大きいため、銀行が通常の条件での融資を渋った。そこで政府が全額補償をのんだのです」(金融関係者)

 全額補償の後ろ盾があってはもはやビジネスではないとの声が聞こえてくる。 しかも、日立の原発プロジェクトが失敗して多額の融資が焦げ付けば、そのツケは国民に跳ね返ってくるのだ。

 そこまでして安倍政権が原発輸出を進めようとする背景には、経産省の思惑も働いていると元経産官僚の古賀茂明氏は話す。

「原発産業はすそ野が広く利権の宝庫。天下り先も多い。それを守るためには、是が非でも原発維持が必要です。経産省内で安倍さんは核武装論者だと思われている。首相の意向を忖度するふりをしつつ、実は、原発再稼働や輸出を進める安倍政権を利用して利権を守る。それが将来の生活保障になるというシナリオです」

 しかも、いまや日立が強い立場にいる。

「日立は今後、プロジェクトから降りることを匂わせながら、すべてのリスクを政府に被せてきます。そもそも原発輸出したくて仕方のない日本は、相手から見れば、何でも言いなりのいいカモです。東芝と同じ轍を踏めば、結局その尻ぬぐいをするのは国民なのです」(古賀氏)

 原発のコストは、やはり高くつき、やがて国民一人ひとりに跳ね返る。

 世界的に見れば、再生可能エネルギーへの投資が原発投資をはるかに上回る。

 憲法改正、消費税も大事だが、安倍政権、野党は選挙の争点として逃げずにキチンと論議すべきだった。

週刊朝日 2017年11月3日号