「全米オープンゴルフ選手権」で2位となった松山英樹選手(25)。丸山茂樹氏がその理由を解説する。

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 いやあ、テレビの解説をしながら前のめりになっちゃいました。

 海外メジャー第2戦の「全米オープンゴルフ選手権」(6月15~18日、米ウィスコンシン州エリンのエリンヒルズ)で松山英樹(25)が、メジャー大会の日本勢過去最高に並ぶ2位に入りました! 初日から74、65、71、66と波があって、見てる側は「苦しいなあ」「やっぱりすげえな」というアップ&ダウンの4日間でした。素晴らしい戦いでしたよ。

 2月の「フェニックス・オープン」で2連覇してからトップ10に一度も入れないまま迎えた全米オープンでしたけど、やっぱり心配はいらなかったですね。2日目、最終日のように一発大きなスコアを出せる土台はできてますから。ただ初日と3日目のようにパッティングがよくないと、勝ちきるのは難しい。ゴルフは総合力のスポーツですからね。中でもパッティングって、いちばん平均値が落ちちゃいけないんです。そのホールの最後の締めだし、次のホールにつなぐ、すごく大事な部門だから。

 この試合で、英樹がスピンを上手に使っていたのに気づいた読者のみなさんも多いんじゃないでしょうか。あれはね、エリンヒルズの芝の質とか地面の硬さが、英樹のアプローチに合ってたんでしょうね。ときどきあるんですよ、「ここのフェアウェー、異常に俺に合ってるな」とか、「バンカーの砂、ここのは大好き」だとか。そういうマッチングがあったとき、ショットにすごく自信を持てることがあるんですよ。今度英樹に会ったら聞いてみたいと思うんですけど、たぶん相性がよかったはずなんです。あれだけのスピンは、ここ最近見たことがなかった。その技術の高さもさることながら、そういう精神的な要因もあったんじゃないかと思いますね。

 僕にアプローチのアドバイスを求めに来たころに比べると、ずいぶん引き出しが増えたと思います。ああいうのは味付けみたいなもんですからね。「このソースの中に、ちょっとあれを入れたらおいしいな」とか、「ぴりっと辛くしたいな」とか。僕だけじゃなくていろんな人に聞いてますから、いろんな味付けをしていって、自分のものにしてるんだと思います。

 
 英樹は人の話を聞く能力が高いと思います。今回も初日のラウンド後に宮里優作のお父さんの優(まさる)さんにパットについてアドバイスしてもらったみたいですね。あそこまでの実力者になると、あんまり人の話を聞かなかったりするんですけど、英樹は違います。僕もコーチのいない時期が長かったんで、いろんな先輩たちに教えてもらって成長できました。僕は日本の先輩だけでしたけど、英樹の場合は世界中の選手に聞けますからね。

 世界ランキングは日本選手最高をまた更新して2位になりました。次のメジャー大会は「全英オープン」(7月20~23日、英国中西部サウスポートのロイヤルバークデールGC)です。全英はまったく別物ですから、全米がよかったからって上位にいけるとは思いません。それでも英樹が好調を維持して4日間戦い抜けば、どうなるか分からない。日本選手初のメジャー制覇は確実にあるし、どんどん近くなってると思います。

週刊朝日  2017年7月7日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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