コンプリート・ライヴ・レコーディングス 1948-1955
コンプリート・ライヴ・レコーディングス 1948-1955
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Part 1:10枚組前半の目玉はマイルス、パーカー、ガレスピーの3者共演!?
Complete Live Recordings 1948-1955 (United Archives)

 ドッカーンと真っ赤なボックスに収納されての10枚組、さぞや高かろうと思わせておいて1枚あたり500円弱というから、まことにもってありがたいのかありがたくないのかよくわからないが、別項データ欄にあるように、これだけの音源をアルバム単位で集めようと思ったら、その何倍もの経済的負担と探索時間を強いられる。それを思えばこの10枚組ボックス、加えてマニアのみならず浅く初心者まで容易に手が出せるとあっては、いくら「箱物は聴かない」とはいえ素通りするわけにはいかない。聴く・聴かない以前の問題として、「どうだ、買っとけドロボー」と強く推奨しておきたい。

 というわけで2回に分けてのご紹介となるが、まず前半5枚のなかで最大のハイライトは、フィロロジー盤でしか聴くことのできなかった2曲(ディスク1:13~14)が素知らぬ顔して収録されている点。1948年の秋(推定)、シカゴ「パーシング・ボールルーム」でのライヴにして、なんとディジー・ガレスピーのビッグ・バンドにマイルスとチャーリー・パーカーが参加という豪華なセッション。がしかーし、この2曲に関してはパーカーらしきサックスの鳴りは聞こえず、トランペット・ソロは出てくるもの、これまた「絶対にマイルス」と特定できるようなできないような、いや特定してもいいがしなくてもいいような、まあそのようなわけで看板倒れ(ドッシャ~ン←倒れた音)。

 ともあれこの問題の音源、久しぶりに心して聴いてみたが、うーん、デジタル・リマスタリングされてもなおこの音とは、ツラい。肝心のペットだが、テーマとソロを吹いているのが別人であることはわかるが、テーマはマイルスでもガレスピーでもなく、では次なるソロ・パートはといえば、最初はマイルスのように聞こえるが途中からガレスピー的フレージングをみせ、もしこれがマイルスによるソロとするなら、"ガレスピーを真似るマイルス"という変格活用的展開かと余裕をかましているまもなく演奏はフェイドアウト、次にバラードが流れてくるが、これも30秒足らずで消えていく。まあ、"デジマス"というコピーにつられて過度の期待を抱いた当方が悪かったということですね。

 不発に終わったマイルス、パーカー、ガレスピーの3者共演はともかくとして、新しいファンには、スタン・ゲッツとの共演(ディスク4:1~4)あたりがお勧めだろう。思わず悶絶するような放送音源の集中砲火にあって音質は異例の上級、さすがはスタジオ録音と納得。ただしそこが勝敗の分かれ目でもあり、これが本物の「バードランド」ライヴであったらと地団太を踏む思い。グワッと燃えあがるメラメラ感に欠け、マイルスとゲッツの鬼気迫る共演を期待すると肩透かしを食らう。なおマイルスとゲッツの双頭グループはこの直前に実際に「バードランド」に出演(2月9~16日)しており、今後はそちらの音源発掘を激しくお願いしたい。(次回につづく)

【収録曲一覧】

●Disc 1
1-8:1948/9/4 (not 9/11)(NY)→see『Listen To Miles』P20
9-11:1948/9/18 (NY)→P20
12:1946/3/31 (LA)→P14
13 Good Bait
14 Unknown Ballad

13,14:1948 Autumn (not August) (Chicago)
Dizzy Gillespie Big Band;
Dizzy Gillespie (tp, leader) Miles Davis (tp) Dave Burns (tp) Willie Cook (tp) Elmon Wright (tp) Jesse Tarrant (tb) Andy Duryea (tb) Charlie Parker (as) John Brown (as) Ernie Henry (as) Joe Gayles (ts) James Moody (ts) Cecil Payne (bs) James Foreman, Jr. (p) Nelson Boyd (b) Teddy Stewart (ds) Chano Pozo (per)

*1-12 taken from 『Complete Birth Of The Cool』『Rare Miles』

●Disc 2
1-4:1948/9/25 (NY)→P22
5-7:1949/1/17 (NY)→P26
8-11:1949/2/19 (NY)→P30
12-13:1949/2/26 (NY)→P30

*All tracks taken from『At Royal Roost 1948, At Birdland 1950・51・53』『Nonet 1948, Jam 1949』『All Stars Recordings』

●Disc 3
1-11:1949/5/8,9,12,14,15 (Paris)→P32
12-14:1949/12/24 (NY)→P34

*All tracks taken from 『Paris Festival International De Jazz』『In Paris 1949』『Charlie Parker & The Stars Of Modern Jazz At Carnegie Hall,X'-mas '49』

●Disc 4
1-4:1950/2/18 (NY)→P36
5-8:1950/6/30 (NY)→P40

*All tracks taken from『Birdland Days Featuring Stan Getz』『Birdland 1950』

●Disc 5
1-4:1950/6/30 (NY)→P40
5-8:1951/2/17 (NY)→P46

*All tracks taken from『Birdland 1950』『Birdland 1951』

●Disc 6
1-3:1951/6/2 (NY)→P46
4-6:1951/9/29 (NY)→P46
7-9:1952/4/25 (NY)→P54
10-11:1952/5/2 (NY)→P56

*All tracks taken from『Birdland 1951』『Rare Unreleased Broadcasts』『Miles Davis Quintet-Sextet』

●Disc 7
1-9:1952 Spring (St. Louis)

*same as 『Our Delight』(Prestige)→P52

●Disc 8
1-4:1952/5/3 (NY)→P56
5-11:1953 early (Boston)→P62

*All tracks taken from『Miles Davis Quintet-Sextet』『Hi-Hat All Stars Recorded Live At The Hi-Hat』

●Disc 9
1-4:1953 early (Boston)→P62
5-9:1953/5/16 (NY)→P22
10 The Bluest Blues
11 On The Sunny Side Of The Street

10,11:1953/5/23 (NY)
Miles Davis (tp) Dizzy Gillespie (tp, vo) Charlie Parker (as) Sahib Shihab (bs) Wade Legge (p) Lou Hackney (b) Al Jones (ds) Joe Carroll (vo)

*1-9 taken from『Hi-Hat All Stars Recorded Live At The Hi-Hat』『At Royal Roost 1948, At Birdland 1950・51・53』

●Disc 10
1-3:1953/9/13 (LA)→P68
4-7:1955/7/17 (Newport)→P82
8-9:1955/11/17 (not 11/18)(NY)→P96

*All tracks taken from『At Last!』『Miscellaneous 1955-1957』『Legendary Prestige Quintet Sessions』

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